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リセッションとは?市場の暴落とはどう違うのか?
Jul 25, 2025 5:54 AM

経済が揺らぎ株式市場が急落するたび、景気後退(リセッション)市場暴落(マーケットクラッシュ)という用語が飛び交います。時に同じ見出しで扱われることもありますが、実はこれらは全く異なる現象です。

一方は雇用・消費・生産など実体経済全体に関わり、他方は市場の動向を示します。重なる部分はあるものの、常に連動するわけではありません。本質的な違い、混同される理由、そして現状分析を解説します。

景気後退の本質

景気後退とは経済活動の持続的かつ広範な減速を指します。消費縮小・企業活動の抑制・失業率上昇が特徴で、米国では実質GDPが2四半期連続で減少した場合に加え、全米経済研究所(NBER)が賃金・雇用・生産・消費などの総合的な指標を分析し公式認定を行います。

主な要因は複合的:急激な利上げ・高インフレ・地政学的ショックなどが組み合わさって発生します。第二次大戦後、米国では12回の景気後退を経験し、平均持続期間は約10ヶ月。2007-2009年の世界金融危機では18ヶ月間続きました。

市場暴落の定義

市場暴落は投資家心理の急激な悪化による株価の急落現象です。パニック売りが連鎖し、ボラティリティが急上昇。景気後退が数ヶ月かけて進行するのに対し、暴落は数日単位で発生します。

主な事例:

  • 2000年ITバブル崩壊:ハイテク株急落も実体経済は即時崩壊せず
  • 2008年リーマンショック:金融危機が深刻な景気後退を誘発
  • 2020年コロナショック:S&P500が22営業日で30%超急落(史上最速)

暴落と景気後退は連動する場合もありますが、必ずしも因果関係があるわけではありません。

混同される理由

市場が将来予測に基づき先行して動く特性に起因します。景気後退予想が株価下落を招き、回復兆候が市場反発を先行させるため、実体経済と市場動向にタイムラグが生じます。

実際、2008年と2020年の景気後退公式認定より数ヶ月前から株価下落が始まっていました(下図参照)。

S&P500と米国GDP成長率の比較(2000-2024年)

出典:S&P Dow Jones Indices LLC; 米国経済分析局 via FRED® 灰色領域は米国景気後退期。過去の実績は将来の成果を保証しません(2025年7月3日時点)

影響度比較

一般家庭には景気後退の影響が直接的に響きます(失業・物価上昇など)。一方、市場暴落は投資家に心理的打撃を与えますが、早期の損失確定やリバウンド機会損失を招く危険性があります。両者の区別は投資判断において極めて重要です。

2025年半ばの現状分析

2025年7月現在:

  • 米国実質GDP:前期比年率-0.5%(輸入増・消費減速)
  • 失業率:4.1%と低水準維持
  • コアCPI:3.1%(FRB目標2%超えるも低下傾向)
  • 小売売上高:5月+0.2%(旅行・ECが牽引)

株式市場は堅調:S&P500(+5-6%)、Nasdaq-100(+8%)、日経平均(38,000円台)。ECBは利下げ開始FRBは政策金利4.25-4.50%で据置。現状は景気後退でも市場暴落でもなく、減速しながらも安定成長が続く「慎重楽観」の段階と分析されます。